アンシャープマスク

概要

画像の局所毎に周辺とのコントラストを増幅して画像を引き締めるフィルターです。 処理半径が可変であることと、多くの場合、閾値(ピンぼけ・手ぶれレスキューでは下限値)の指定ができることから、一般的フィルターの中でシャープネスの補完などのために最も有用な手法です。

従来は他に有効な手段がなかったため、ぼけにもぶれにも何にでもアンシャープマスクが用いられることがありましたが、基本的にアンシャープマスクは、ピクセル毎に周辺との濃淡の差を一定の比率で増大させるという比較的単純な処理であるため、たとえば手ぶれ補正の目的に使用するのには相当に無理があります。

しかし、素直な効果が得られる有用なフィルターであることには間違いはなく、ピンぼけ・手ぶれレスキューでは更にさまざまな機能拡張をアンシャープマスクに施してあります(彩度のモード、上限値、ノイズ抑制など)。 なんにでもアンシャープマスクを用いるのではなく、適切な場面に(アンシャープマスクも含め)それぞれ適切なフィルターを使用することをお勧めします。

なお、そのような意味でアンシャープマスクは、画像の広い範囲に自然なシャープネスを付与する目的に向いています。



標準パラメーター

典型的な利用方法での便宜のため、以下の選択枝を用意してあります。 そのまま実行しても効果を得られますが、画像にあわせてモードや半径の指定値を調整することをお勧めします。



パラメーター

モード・半径・効果・全域効果・下限値・上限値・下限漸次調整域・上限漸次調整域・ノイズ抑制・半径が大きいときは速度優先の10個のパラメーターがあり、アンシャープマスクを選択するとコントロールパネル(画面右側)に表示されます。

さまざまな指定ができる分パラメーターが多いので、慣れない方は標準パラメーターを活用して、その状態から半径と効果を調整するのが良いかもしれません。



モード

アンシャープマスクを施す方法を指定します。

半径

局所コントラストを求めるための半径を、ピクセル単位で指定します。

大きな半径を指定するとアンシャープマスクの効果も画像全体として強くなる傾向がありますが、単に効果の強弱を調整するためには「効果」の値を調整して下さい。 大きな半径に対して効果が強くなるのは、局所コントラストとして高い値が計算された結果です。 実際にはすべてのピクセルで効果が強くなるわけではありません。

コントラストを高めたい画像のティテールの細かさに応じた半径を指定して下さい。

効果

施す効果の強さを指定します。

ここで指定した値は、画像の部分部分で下限値・上限値・下限漸次調整域・上限漸次調整域の各指定によって調整されて適用されます。

全域効果

下限値(閾値)や上限効果の指定に関わらず、無条件に画像全域に及ぼす効果の強さを指定します。 効果と全域効果の両方を指定した場合には、両方の効果が加算されます。

下限値

元画像の局所コントラストが、この下限値で指定した値を下回る場合、該当のピクセルには(「効果」で指定した強度の)効果を施しません。 元画像上でコントラストの低い滑らかな部分を、滑らかなままに維持する目的などに使用します。

「閾値」または「クリッピング」などと呼ばれるパラメーターと同じものです。 このアンシャープマスクでは、元画像の局所コントラストの下限値ばかりではなく、上限値でも効果の対象範囲を限定することが出来るようにしたため、これらを呼び分けるために「下限値」と「上限値」としました。

上限値

元画像の局所コントラストが、この上限値で指定した値を超える場合、該当のピクセルには(「効果」で指定した強度の)効果を施しません。 一般的なアンシャープマスク処理で、元画像上でコントラストの高い部分が更に高いコントラストを生じ、不自然な白飛びや黒潰れなどの破綻を起こしてしまうことを回避するために使用することが出来ます。 但し、通常は 255 を指定しておくか、50 程度の無難な値を指定しておくのが良いでしょう。



下限漸次調整域

下限値の指定によって、効果の施される部分と施されない部分の境界が問題になるような場合に使用(0 以外を指定)して下さい。 この値を指定した場合、元画像で下限値未満の局所コントラストを持つ位置に対しても、(突然まったく効果を及ぼさないのではなく)弱く効果を施して、その境界での効果強度の変化を滑らかにすることが出来ます。 ここに大きな値を指定するほど、下限値をより下回る局所コントラストを持つ領域に対しても(弱く)効果を施すようになります。

上限漸次調整域

「下限漸次調整域」と同様、元画像において上限値を超える局所コントラストを持つ領域の扱いに対するパラメーターです。 ここに大きな値を指定するほど、上限値をより上回る局所コントラストを持つ領域に対しても(弱く)効果を施すようになります。



ノイズ抑制

アンシャープマスクの局所コントラストを増大させる処理は、ノイズも増大させてしまうことを意味します。

これをチェックすると、アンシャープマスク処理でノイズ成分を増大させてしまうことをある程度まで抑制できます。 但し、アンシャープマスクの効果は相対的に弱くなります。

半径が大きいときは速度優先

アンシャープマスク処理は半径が大きくなるほど処理時間を要します。 これをチェックすると、処理精度を多少犠牲にする代わりに処理速度が若干速くなります。

処理半径が大きなときほど、ここで犠牲にする処理精度の影響は少なく、特別に精度を求める場合以外はチェックしたままで構いません。



使用時のコツ

下限値

まず、下限値の使い方の例から見ていきます。 ここでピンぼけ・手ぶれレスキューの下限値は、閾値・しきい値・クリッピングなどとも呼ばれるものと基本的に同じものです。

一番左側は元画像ですが、ごく軽くピンぼけしています。 輪郭強調やクリアエッジフィルターを使う選択もあり得ますが、画像全域が軽くぼけていますのでアンシャープマスクを使うのが素直です。

元画像に無造作にアンシャープマスクを施したのが、左から2番目の画像です。 目元や口元がキリッとして良い感じですが、肌が滑らかさを失ってざらついた感じになってしまいました。 拡大してみると肌の部分の画質の荒れは一目瞭然で、大きく伸ばしてプリントする場合などは大問題となりかねません。

なお、独自拡張機能のノイズ抑制のチェックはわざと外してあります。 本来このような画像であれば、ピンぼけ・手ぶれレスキューのアンシャープマスクでは下限値を使わなくても、ノイズ抑制機能である程度はノイズを抑えられます。

それに対して、下限値を使用したのが左から3番目の画像です。 肌に滑らかさを感じられるようになりました。 このように、本来滑らかな筈の部分にシャープネスを付加したくない場合に、下限値はたいへん有効な機能なのです。

そして、加えてピンぼけ・手ぶれレスキューの拡張機能を積極的に使用したのが一番右の画像です。 3番目の画像で下限値の効果が既に十分発揮されているので、さほど大きな差ではありませんが、更に自然に滑らかな感じになりました。

実は3番目の画像でも下限値をもう少し上げるともっと肌は滑らかになるのですが、その代わり滑らかな部分と滑らかでない部分の差が激しく現れすぎて下限値を上げられませんでした。 一番右の画像では、単にノイズを抑えるだけでなく、滑らかさの差の境界が出現しないように下限暫時調整域を使用しました。

  元画像   下限値使用せず   下限値を使用   拡張機能も積極的に使用  
         
         
    モード 輝度
半径 3.0
効果 80
全域効果 0
下限値 0
上限値 255
下限漸次調整域 0
上限漸次調整域 0
ノイズ抑制 OFF
半径が大きいときは速度優先 ON
  モード 輝度
半径 3.0
効果 80
全域効果 0
下限値 7
上限値 255
下限漸次調整域 0
上限漸次調整域 0
ノイズ抑制 OFF
半径が大きいときは速度優先 ON
  モード 輝度
半径 3.0
効果 80
全域効果 0
下限値 12
上限値 255
下限漸次調整域 10
上限漸次調整域 0
ノイズ抑制 ON
半径が大きいときは速度優先 ON
 
  上は原寸のまま顔の周辺のみにトリミング、下は3倍拡大後右目の周辺のみにトリミング、原寸版全体画像は以下
 
  元画像 (736,240 bytes)   処理後全体 (580,688 bytes)   処理後全体 (469,116 bytes)   処理後全体 (462,214 bytes)  

上限値

次はピンぼけ・手ぶれレスキューでの拡張機能のひとつ、上限値の使い方の例を見ます。 仕組みは下限値の場合ととても似ています。

左の元画像は前ピン気味で、かなりピントの甘い画像です。 トリミングして表示しているのは元画像中で最も近くに咲いている枝ですので、それでも一番ピントの合った部分です。 なお、画像のこの部分は風による被写体ぶれも混じっているかもしれません。

元画像に普通にアンシャープマスクを施したのが中央の画像です。 桜の花はくっきりしましたが、全体的にギラギラして落ち着かない感じになってしまいました。 アンシャープマスクを強く施しすぎたのかもしれません。

それに対し、他のパラメーターは一切変えず、下限値と下限暫時調整域だけ指定したのが右の画像です。 花の鮮明さはさほど変わらないまま、ギラギラした感じが抑えられました。 これが上限値の機能で、元々コントラストの高い部分では効果を抑え、それ以上コントラストが高くならないように働きます。

実際には元画像では、主に桜の枝に太陽光が反射した部分で非常に強い局所コントラストが生じていました。 そのような部分のコントラストを更に強調してしまうことが避けられたことで、アンシャープマスクを施す本来の意図を保ったまま、画質が荒れた感じがしてしまうのをかなり避けることができました。

  元画像   上限値使用せず   上限値を使用  
       
    モード 輝度
半径 3.5
効果 100
全域効果 0
下限値 0
上限値 255
下限漸次調整域 0
上限漸次調整域 0
ノイズ抑制 OFF
半径が大きいときは速度優先 ON
  モード 輝度
半径 3.5
効果 100
全域効果 0
下限値 0
上限値 20
下限漸次調整域 0
上限漸次調整域 20
ノイズ抑制 OFF
半径が大きいときは速度優先 ON
 
  原寸のまま一部のみにトリミング、全体画像は以下
 
  元画像 (1,551,391 bytes)   処理後全体 (1,065,594 bytes)   処理後全体 (1,044,157 bytes)  


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